令和6年度 9月学位記授与式(卒業式)学長式辞

Date:2024.09.25

令和6年度駒澤大学「9月学位記授与式」にあたり、一言、御祝辞を申しあげます。
晴れて卒業される皆さん、ご卒業、そして、ご修了おめでとうございます。

この日を心待ちにされ、これまでご支援くださいましたご親族の皆様に対し、改めまして心からのお祝いを申し上げます。卒業に至るまでのプロセスは、それぞれに長い道のりだったことでしょう。
しかし、本日、こうしてしっかりと「学位」を取得された皆さんの努力とその成果は、今後の人生を支える基盤となることと確信しています。

みなさんの大学生活の前半2年間がオンライン中心だったことは、世界共通の歴史に残る経験とはいえ、厳しい体験だったことは確かです。しかし、世界中の同年代の仲間とともに、今後の人生に活かし、ともに新しい未来を創造して欲しいと願っています。

20240924gakucho各務 洋子 学長

私が学長に就任しました2021年4月以来、3年半が経ちましたが、「デジタル化の推進」と「ダイバーシティの尊重」には継続して取り組んでいます。その間にも、社会は様々な局面で、大きく変化を遂げ、AIの参入により「デジタル化」の技術もさらに進化しています。それに連れて、「ダイバーシティ(多様性)」つまり「個人」の在り方も大きな変容を遂げています。この1年の外部環境の変化の中で、皆さんの今後の人生に大きく影響するであろう変化について、3つだけお話したいと思います。

第一に、やはり生成AIの技術と働き方です。2023年は「生成AI元年」と呼ばれましたが、ITの専門家ではなくとも、その動きは、ただの成長ではない、指数関数的な成長であるということ、パフォーマンスはすでに人間を上回っていることなど、納得するところでしょう。これは私の専門のビジネスの世界の話ですが、ASEAN諸国の中でも、デジタル化に遅れをとっている我が国ですが、今年6月、嬉しいニュースがありました。昨年7月に創業したばかりの生成AIのスタートアップ企業である「サカナAI」という会社が、わずか10か月でユニコーン企業となりました。ユニコーン企業とは、企業価値10億ドル、約1600億円を超える未上場企業のことです。単純に日米を比較しますと、ユニコーンと呼ばれる企業数は約50倍の差があると言われていますが、AIの分野で、日本発の活力ある企業が生まれたことは、これから社会に出る皆さんにとって、大きな夢を与えてくれる出来ごとだと思います。

次は、世界の人口です。2022年11月15日、国連は世界人口が80億人を超えたと発表し、今年82億人に達すると予測されています。世界の国の数は、国連加盟国では193ヵ国。日本の外務省によれば、2023年9月の時点で、日本を含めて196ヵ国としていますが、世界人口の約半分は7つの国に住んでいる状況に変化しました。インド、中国、アメリカ、インドネシア、パキスタン、ナイジェリア、ブラジルです。
一方で、日本の出生数は、戦後、年260万人台でしたが、2016年に100万人を割り、今年は、70万人を割り込む公算が大きいと予測されています。
文部科学省でも、今から5年後の2029年から5年間で、18歳人口は毎年1万人減少し、その後、5年間で、毎年3万人が減少すると試算しており、予想より早いペースで人口は減少しています。今、世界の人口のうち日本人の割合は1.53%。100人の村に例えれば、日本人は1.5人ですが、100人のうち一人を割ることは確実といわれています。その結果、皆さんがこれから働く仕事の現場でも、共に働く顔ぶれは日本人だけではなく、多様な国の人々と共に仕事をすることになります。語学だけではなく、そのために何をしなければならないか、真剣に考えて欲しいと思います。

最後に、気候変動についてです。今年の夏、気候変動に加えてエルニーニョ現象の影響もあり、歴史上もっとも暑い夏になりました。昨年7月、国連のアントニオ?グテーレス事務総長が、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」と警告しましたが、今まで定着していた「地球温暖化」よりもレベルの高いキーワードが使われるようになりました。「人間活動で温室効果ガスが増えた」ことを計算に入れなければ、説明がつかない。」とも言われますが、その原因が何なのか、それを防ぐためにはどうすればよいのか、世界共通の課題として、ともに考えていかなければなりません。

こうして世の中は常に変化しています。世界共通の問題について、世界中で対話と協調を続ける努力が、ますます必要になります。国の違いだけでなく、言語や文化、価値観の壁を越えて、多様な人々と対話を進めて合意に至るプロセスは、簡単ではありません。しかし、多様な意見を尊重し、それぞれが譲歩して合意しようとする姿勢と努力が、今まで以上に必要であることは確かです。
幸い、本学を卒業される皆さんは、仏教の教えを少なからず学んでいます。こうした「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状況を示すVUCAの時代を力強く生きる「"智慧と慈悲"の精神」をもち、「しなやかな、意思。」を身に付けています。誇りをもって大海に乗り出してください。本学で学んだ様々な知識と知見を社会の現場で日々実践して欲しいと思います。

改めまして、お祝い申し上げます。
ご卒業おめでとうございました。
各界で活躍される皆さんの姿に思いを馳せつつ、私の祝辞といたします。

令和6年9月21日

駒澤大学学長
各務 洋子